診療支援
治療

抗酒薬
aversive treatment for alcohol dependence
湯本洋介
(久里浜医療センター・アルコール科)
樋口 進
(久里浜医療センター・院長)

【定義】

 抗酒薬は数十年前から使用されており,現在も多くのアルコール依存症者に処方されている.わが国においては液体製剤のシアナミドと粉末製剤のジスルフィラムが使用可能である.

 抗酒薬自体には飲酒欲求を抑える作用はない.その作用機序は,抗酒薬がアルデヒド脱水素酵素acetaldehyde dehydrogenase 2(ALDH2)の働きを阻害し,もしアルコールを摂取すればアセトアルデヒドが蓄積され,頻脈や顔面紅潮,悪心や嘔吐や血圧低下といった不快な反応をもたらすというものである.この不快反応に対しての恐怖感や苦痛を避けようとする思考がアルコール使用を思いとどまらせ,断酒効果につながる.ただし,いずれの薬剤もその代謝物が薬効を発揮するため,肝障害などで薬物代謝が十分でなければ服用していても効果がない場合があり,処方に注意が必要である.

 両者には薬効の持続時間に差がある.シアナミドは内服直後から効果を認め,12-24時間作用している.一方で,ジスルフィラムはシアナミドよりも効果発現が遅いが,作用期間は1-2週間持続するといわれている.

 副作用として,5%に薬疹がみられる.またまれに肝機能障害を起こすことがあるため,何度も断酒に失敗して肝機能が悪化している患者には使用できないこともある.

 用法としては,毎朝起床時に内服する方法が推奨されているが,酒を勧められやすい状況で再飲酒を回避したいときに使用するなどの頓服的に使用する方法もある.また家族など,服薬を支援する者の前で服用することが効果的といわれている.

【適応】

 抗酒薬の適応の選択については,服用に際して患者のモチベーションが重要であり,患者自身がアルコール依存症を治療するという意志をもって自ら進んで服用することが重要である.断酒治療のモチベーションが低い場合に本人に内密で投与することは,大量飲酒をしてしまった場合に不快

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