抗精神病薬の定義,適応,分類,薬理作用,副作用などについては抗精神病薬の項(→)に詳細に記載されている.本項ではそれらの項目は除外した.
A.抗精神病薬の登場からその後の発展まで
1950年代に開発されたクロルプロマジン薬を嚆矢とし,60年代はハロペリドール薬などが続いた.いずれもドパミンD2受容体遮断作用を有し,統合失調症のドパミン仮説が生まれた.1970(昭和45)年になると多くの受容体の遮断作用をもつクロザピン薬が登場した.1990年代にはセロトニン・ドパミン拮抗薬のリスペリドン薬薬が非定型抗精神病薬の最初の薬物として臨床で用いられ,2000年代には,オランザピン薬薬,クエチアピン薬,ペロスピロンなど非定型(第二世代)抗精神病薬がそろい,2006(平成18)年に開発されたドパミン,パーシャルアゴニストのアリピプラゾール薬と相まって現在の精神科臨床の主要な薬物として幅広く用いられている.
B.現在頻用される抗精神病薬の特徴と問題点
第二世代の抗精神病薬はその薬効に関して第一世代を凌駕するものではない.しかし錐体外路症状などの副作用は明らかに少なく,使いやすい薬物として用いられている.問題点としては,薬理作用が不十分であり,統合失調症の治癒に至る例は多くない.また頻度やその重症度は減少したとしても副作用は依然として存在する.ドパミンD2受容体遮断効果のみでは,十分な薬効が得られず副作用も残存するおそれがあり,今後新しい奏効機序の薬物が期待されるゆえんである.
C.今後期待される抗精神病薬
端的にいえば上述の2項目すなわち十分な薬理効果と副作用のない薬物の開発である.
1)統合失調症のすべての領域(陽性症状・陰性症状,気分の変化,認知・思考やその統合の失敗)の改善に十分な薬理効果をもつもの.従来陽性症状の改善,次いで陰性症状の改善を目指した薬物の開発は,最近は認知機能障害に目が向
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