◆小児の薬物療法の背景
子どもの心の診療では,長らく薬物治療は中心的位置を占めていなかった.その背景には,児童・青年精神医療においては,多くの疾患が心因性のものであると考えられ,歴史的には薬物療法は軽視される傾向があった.「児童青年期の精神疾患は根本的原因が解明されておらず,薬物療法は対症療法であって,望ましくない」「薬物療法を行うことで,成長してから依存・乱用の可能性がある」などがその理由であり,薬物が“科学的拘束衣”とよばれたこともあった.児童青年期の精神疾患においても,生物学的研究が進むとともに,脳内神経伝達物質の異常などが報告されるようになってきた.
A.薬物療法をどうとらえるか?
「期待された症状に効果がない」「眠気が目立って,効果がよくわからない」などの理由で,薬物療法が非難されることがある.その背景には,心因論への過信,薬物への過度の期待などがあったと思われる.一方,学校現場で
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