◆意義とプロセス
集団精神療法とは,参加者の健康や幸福に寄与することを目的に,集団を意識して意図的に働きかける活動を総称している.さまざまな定義があるが,おおむね,①集団(2人以上のメンバーと1人以上の訓練を受けた集団療法家)が一定の時間枠で行う精神療法で,②目的はメンバーの,(i)症状・行動の改善,(ii)心理的問題の解決・緩和,(iii)人格的成長におかれ,③目的にかなうように集団が編成され(グループサイズ,問題や疾患別,自我レベルなど),④メンバー間のコミュニケーション,集団の心の動き(集団力動)を活用することと考えてよい.境界は必ずしも明瞭とはいえないが,厳密には,集団精神療法(group psychotherapy),集団療法(group therapy),集団活動(group work),活動集団(work group)などと大別される.集団であることによって,そこには必ず特有の心理的メカニズムが発生するが,これを集団力動(group dynamics)とよび,あらゆる集団活動の基礎理論となっている.集団精神療法を行う際には,1人では生じなかった個人の反応が生まれ,集団全体として変化していくとともに,最終的には集団を構成する個人の回復なり成長がもたらされる.したがって治療者は,①全体としての集団,②集団成員間の相互作用,③個々のメンバー間の相互作用の3つの側面に注意を払っていく必要がある.集団がどのように治療的作用をもたらすのかについては,特にヤーロムによる11の治療的因子が有名である(表1)図.このような作用が最大限に発揮されやすいようにすることを念頭におく.
◆適応
集団精神療法の対象は,多岐にわたる.疾患別では,統合失調症,うつ病,双極性障害,神経症性障害,パーソナリティ障害,摂食障害,アルコールや薬物などの物質依存などが考えられる.また,患者本人だけでなく