◆定義
マインドフルネスとは,パーリー語のサティという言葉の英訳で,日本語では「気づき」,漢語では「念」と訳されている.最近のマインドフルネスの操作的定義は,①一瞬一瞬の体験に意図的に注意を向けること,②今の瞬間の体験に対して心を開き,好奇心をもってアクセプトする(そのままにしておく)こと,③結果的に,思考や感情に対して脱中心化した視点を獲得し,主観的で一過性という「心」の性質を見極めること,としている.マインドフルネスのルーツはブッダが説いた根本経典「呼吸による気づきの教え」だといわれている.ブッダはマインドフルネスにより一切の苦しみから解放されると説いた.
マサチューセッツ大学のカバットジン(1944-)は学生時代に日本の禅者鈴木大拙の影響を受けた.そして,その後,鈴木俊隆の著書“Zen Mind, Beginner's Mind”に出会い,本格的に瞑想を追求した.さらに,曹洞宗の開祖道元禅師の思想の影響を強く受けた.このようにしてカバットジンは禅の思想と実践法をマニュアル化した8週間プログラムを作成し,医学に適応させた.そして,1979(昭和54)年にマインドフルネス・ストレス低減法mindfulness-based stress reduction programを実施するセンターをマサチューセッツ大学医学部のなかに開設し,初期は医学的処置が困難な慢性疼痛の治療に成果を上げた.その後,対象範囲を乾癬や高血圧症などの心身医学的疾患に広げ,さらに精神疾患も取り扱うようになった.その後,ティーズデールらが「マインドフルネス・ストレス低減法」を認知療法に取り入れて“Mindfulness-based Cognitive Therapy for Depression”を著し,うつ病の再発予防効果があることを検証し,マインドフルネスは心理療法の領域でさらに注目されるようになった