診療支援
治療

内観療法
Naikan therapy
竹元隆洋
(指宿竹元病院・会長(鹿児島))

◆定義

 内観はわが国の吉本伊信(1916-1988)によって1940(昭和15)年に創始された自己啓発のための精神修養法であった.それが1954(昭和29)年には矯正教育に導入され,1965(昭和40)年には医学・心理学などに導入され「内観療法」とよばれるようになった.内観療法には一定条件のもとで1週間を基本として行われる「集中内観」と,その効果を持続させるために日常生活のなかで継続的に短時間ずつ行う「日常内観」とがある.集中内観の基本的技法は定式化されており,そのしっかりとした治療構造が治療効果を示している.技法は最初から症状や行動の問題に焦点を絞らず,現在までの生活で密接な人間関係であった人物を対象にして,小学1年生から現在までを3年間ずつに区分し①してもらったこと,②してあげたこと,③迷惑をかけたこと,の3つの視点から過去の具体的事実を調べる.その結果,愛情体験と罪責感(現実開放的罪悪感)の相乗効果によって全人生を通じて真実の全人的な自己を発見することができる.

◆適応

 過去の事実を想起できないレベルの知的障害や認知障害には適応困難であるが,逆に想起可能な心因性疾患にはほとんど適応可能である.内観は真実の全人的自己の発見を目標にしているので神経性障害やストレス関連障害,身体表現性障害,パーソナリティ障害や気分障害(特に遷延性うつ病)にも成果が認められ,特にアルコール依存症,薬物依存症,病的賭博,病的窃盗などの嗜癖行動には有用である.さらに統合失調症の回復期から安定期の心理社会的療法として当院では一応の成果を認めている.

◆集中内観の基本的条件と技法

1)和室の隅を屏風で仕切り,そこに自由な姿勢で座る.筆者の病院では内観専用の木造2階建ての研修棟で同時に最大14人が座れる.このような施設がなくても病室(個室)でベッドに座ればよい.2人以上の病室ではベッドをカーテンで仕切ればよ

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