診療支援
治療

描画療法
art therapy
高江洲義英
(いずみ病院・理事長(沖縄))

◆定義

 描画の歴史は古く,有史以来の洞窟画にみるように,人は絵とともに歩んできた.中世,バロックの芸術を経て,絵画は,宗教や貴族の装飾から「祈り」「癒やし」を伴う「安らぎ」の芸術となり,その地の文化・風土を形成してきた.

 ルネサンスの絵画は「人物画」を宗教的神々から,庶民の生活の安らぎとしてきた.さらにレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたモナ・リザの背景以来,「風景画」の成立により,風景のもつ「安らぎ」「癒やし」も採り入れてきた.

 ことに18世紀の印象派の絵画,モネ,ゴッホさらにムンクやピカソ,ミロ,シャガールなど多くの画家の作品は,今日では病跡学的視点からその自己治療や症状変遷などの「表現精神病理学」という領域を形成している.そして,第二次大戦以降の欧米を中心に,描画表現を媒介とした治療操作が,作業療法やデイケア活動とともに発展してきた.

◆技法選択

 描画療法の技法としては,①自由画法,②課題画法,③誘発線法に分けられる.あるいは,①個人法,②集団法,③共同制作に分かれ,集団も①クローズド・グループ(固定参加)と②オープン・グループ(自由参加),③セミ・クローズド・グループなどそれぞれの実践による治療構造と治療操作が考えられ,適切な技法選択とその適応決定が,疾患の病相期や状態像によってスタッフの間で決められていく.

 描画テストとしての各種技法は,描画療法に転用できるものが多く,治療状況に応じて臨床現場での判断が求められる.①バウムテスト(樹木画技法)「実のなる木を1本描いてください」,②HTPテスト(家,木,人),③Syn-HTPテスト(統合的,家,木,人,一枚法),④人物画法(DAM)「人を1人描いてください」,⑤動的家族画法(KFD)「家族が何かをしているところ」などのテスト技法,さらに⑥なぐり描き法,誘発線法,拡大画法,そして⑦道画法,⑧間合いによる人物連作画法,⑨風景画

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