診療支援
治療

音楽療法
music therapy
村林信行
(医療法人社団信俊会心療内科アーツクリニック大崎・院長(東京))

◆定義

 音楽療法とは,「音楽の持つ生理的,心理的,社会的働きを用いて,心身の障害の回復,機能の維持改善,生活の質の向上,行動変容などに向けて,音楽を意図的,計画的に使用すること」(日本音楽療法学会)と定義されている.

 音楽は感覚ニューロンを通じて感情中枢,運動中枢,自律神経系など脳の幅広い領域に刺激を与え,長期記憶,認知プロセスなどにも影響を与える.また音楽活動はコミュニケーションとしてもとらえられ,特に集団音楽活動では社会性が要求される.

 音楽は古くから民間療法のなかで,心身の病気を治す目的で用いられてきた.ギリシャ神話や旧約聖書のなかにも音楽を用いて疾病を治したという逸話が残されている.

 1940年代に入ると米国では精神科病院でも音楽が治療の手段として用いられ始め,大学でも音楽療法士を養成するコースが誕生した.

 わが国では1995(平成7)年に全日本音楽療法連盟(全音連)が設立され,1997(平成9)年から音楽療法士を認定している.全音連は2001(平成13)年に日本音楽療法学会と名称を変更し,現在に至るまで継続的に音楽療法士を認定している.

◆適応

 音楽療法の適応は幅広いことが特色である.児童(発達障害,精神遅滞など),精神疾患(統合失調症,うつ病,神経症,心身症,頭部外傷など),疼痛管理(手術前後,医学的処置の前後,分娩時など),高齢者(認知症など),神経疾患(パーキンソン病など),緩和ケアなどの領域で音楽療法の実践が報告されている.

◆分類

 能動的音楽療法と受容的音楽療法に分類できる.

 能動的音楽療法とは,患者自身が楽器や声を使いながらセッションに参加する方法である.セラピストは,歌唱,楽器演奏,即興などの方法を用いてセッションを行い,患者と交流する.個人と集団を対象としたものに分けられる.

 即興とは患者が楽器・音源に関して事前に知識をもたずに演奏・歌唱を行う.この際

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