診療支援
治療

感覚統合療法
sensory integrative therapy
岩永竜一郎
(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科准教授・作業療法学)

◆定義

 自閉スペクトラム症などの発達障害児者には感覚過敏や不器用さなどが高頻度にみられることがわかっている.感覚統合療法は,そのような発達障害児者の感覚処理機能や運動行為機能を改善するために用いられる.この療法は米国の作業療法士A.J.Ayresが体系化したものである.近年では,自閉スペクトラム症児に適用されることが多い.

 感覚統合療法の内容は幅広いが,スイングやアスレチック遊具などを用いて,子どもに豊富な感覚刺激が入る運動活動などを中心として行われるのが一般的である.そのような活動のなかで,子どもが感覚刺激をうまく処理して適切な運動・行動を成し遂げられるように誘導する点も特徴である.

◆適応

 発達性協調運動症や自閉スペクトラム症,注意欠如多動症などに適用されることが多い.ただし,社会性の障害に対する効果のエビデンスは不十分である.この療法は発達障害児の協調運動,感覚運動,行動などの改善に効果があることが報告されているため,運動や行動の問題へのアプローチに使える手法といえる.

◆分類

 感覚統合療法は,元来医療機関などの感覚統合訓練室における個別アプローチが基本であった.ただし,実際には療育現場で集団での感覚統合アプローチが行われることも多い.教師が感覚統合理論を取り入れた指導を行うこともある.それは感覚統合法とよばれている.さらにコンサルテーションモデルでの感覚統合の活用なども行われている.保護者や教師に対して,家庭や学校での感覚刺激の与え方の調整の仕方や運動の問題に対する指導方法に関する助言をすることも多い.

◆感覚統合療法の手順

1)アセスメント:まず,対象児の感覚処理や運動機能を調べる.協調運動とそれに関連する感覚処理の評価には,日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査(JMAP),日本版感覚処理・行為機能検査(JPAN)などが用いられることが多い.感覚過敏など,感覚刺激への反

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