診療支援
治療

持続エクスポージャー療法
prolonged exposure therapy(PE)
金 吉晴
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・成人精神保健研究部部長)

◆概念

 持続エクスポージャー療法(PE)は,ペンシルバニア大学のEdna Foa教授によって作成され,遷延する心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状の原因を回避avoidanceであるとの仮定のうえに立ち,avoidanceとは逆の直面化confrontationを系統的に行うことによって,体験記憶の馴化habituation,処理processingを促進する技法である.当初はレイプ被害者を主な対象としていたが,現在では体験の種別によらず,PTSD一般に対する治療として高く評価されている.米国学術会議の報告書ではPTSDについての各種治療法のなかで唯一十分なエビデンスが認められている.

◆治療プログラムの手順

 治療プログラムでは,週1回あるいは週2回として,合計10回の面接が行われる.所要時間はそれぞれ90-120分間である.1つのセッションのなかに異なった治療課題があり,またセッションごとに治療課題が段階的に進展するように定められている.技法としては,治療のなかで体験を想起させ,体験に伴う感情を十分に感じながら体験について語る想像エクスポージャーimaginary exposureと,実生活のなかで回避をしている対象を選んで,あえてそのような対象に接することによる現実エクスポージャーin vivo exposureが主なものである.それ以外に,トラウマ非反応についての心理教育と,被害に伴う認知の歪みの再構成cognitive restructuringが含まれる.

 想像エクスポージャーは,患者が体験記憶に感情的に適切に触れながら,体験について話すことを促していく技法である.想像エクスポージャーの最中には,治療者は患者が事件記憶を再体験し,それについて話すことを促す.患者が内心の恐怖に打ち勝って話し続けていることに対する支持的なコメントを挟んでもよいが,想起の流れを妨げない

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