診療支援
治療

高照度光療法
bright light therapy
三島和夫
(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神生理研究部部長)

◆概要

 高照度光療法(光療法)は,ある特定の時間帯に高照度光を照射することで抗うつ効果や生体リズムの位相変位を惹起する身体療法の1つである.主として冬季うつ病(季節性感情障害)および概日リズム睡眠障害に用いられる.網膜から入射した光が,後頭葉の一次視覚野を介した「物を見る」視覚性作用のほかに,網膜-視交叉-視交叉上核(網膜視床下部路)を介した生物時計の調節,さらに視床下部腹内側核や外側視床下野を介した自律神経機能の修飾,縫線核を介した気分調節など多様な非視覚性作用を有することを利用した治療法である.

◆実施手順

 光療法は,①日照不足もしくは光感受性低下を補うことによる抗うつ効果,および②特殊な時間帯での集中的な照射による生物時計の矯正効果の2つを目的として行われる.患者の網膜に数千-1万ルクスの高照度光を入射させる.ちなみに屋外では数万-十数万ルクスの自然光を浴びられるが,家庭用照明器具はせいぜい500-1,000ルクス程度であり,抗うつ効果も生物時計の矯正効果も全く不十分である.眼精疲労を防ぐ観点からも光源を持続的に注視する必要はなく,1分につき十数秒-数十秒間の割合で光源に視線を向ける程度でよい.照射面に対する視線の角度や光源からの距離が変化すると,眼球に入射する照度は大幅に減少するため,受光方法を十分に指導する.効果が乏しいと訴える患者の多くは,使用法の誤りから不十分な光照度で施行しているケースが多い.光照射器は主として全波長帯域をもつ蛍光灯が用いられ,多くは携帯可能である.最近では非視覚性作用の強い青色光(波長460nm付近)を発するLEDを用いた機種も市販されている.

◆高照度光の位相調整作用

 網膜に入射した高照度光は翌日の睡眠および生体リズム位相を変位させる.光を浴びた時間帯と翌日リズム位相の変位の間にはある規則性があり,覚醒時刻の2時間前から6時間後に相当する時間

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?