診療支援
治療

統合失調症
schizophrenia
田村昌士
(茨城県立こころの医療センター精神科)
太刀川弘和
(筑波大学医学医療系准教授・精神医学)

◆定義

 統合失調症は,急性期に精神運動興奮や自殺企図を呈することがあり,精神科救急の第一義的な適応疾患である.その際,いかに的確かつ迅速に安全確保と治療に導入しうるかがきわめて重要であるが,標準的治療が確立しているとは言い切れない.ここでは治療の骨子を提示する.

◆適応

 基本的に,統合失調症の急性期は精神科救急の適応である.心配した家族に連れられてくる,自殺をはかって救急隊や身体科救急医療機関から診察を依頼される,暴力や異常行動を呈して警察に保護され,精神保健福祉法第23条の警察官通報(23条通報)から措置診察に至る,など患者が精神科救急に至る経緯はさまざまである.主治医,ないしかかりつけ医療機関において,予約外受診による危機介入が行われることを,ミクロ救急とよぶ.現実には初発例や未受診例を含めミクロ救急では対応できない場合も多い.この際には各地の精神科救急医療システムにかかわる窓口のトリアージによって救急医療機関につながる.これをマクロ救急とよぶ.精神科マクロ救急システムは都道府県によってさまざまである.医療機関への搬送は家族が行うことが多く,警察と消防がこれを支援する.

◆対応の手順

A.状態評価と鑑別診断

 まず行動面の評価を行う.患者は病状によっては興奮し,診察に対して拒絶的で,周囲に対して敵意や不信感を抱いている.このような場合,患者は家族や医療者,近隣住民,通行人,そして駆けつけた警察官や救急隊員に対して攻撃的になり,暴力を振るうこともある.硬い表情やとげとげしい言辞,突発的な暴力行為に留意し,ラポール形成もはかりながら慎重に診察を進める.昏迷状態や滅裂状態を呈し,意思疎通がはかれない場合,家族・関係者から病歴を聴取する.自殺企図後の場合は,まず身体状態の確認を優先すべきである.

 次いで,幻覚・妄想をはじめとする病的体験,不安・抑うつなどの症状経過を聴取する.救急におけ

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