診療支援
治療

物質離脱
substance withdrawal
上條吉人
(埼玉医科大学教授・救急科)

◆定義

 物質離脱とは,物質の長期摂取や乱用によって耐性・依存が生じた状態で,物質の摂取の中断,減量,拮抗薬の投与のあとに生じる物質特異的な症候群である.

アルコール,ベンゾジアゼピン系薬物,バルビツール酸系薬物

 これらの物質はいずれもGABAA受容体・複合体に結合部位をもち,GABA作動性神経伝達を促進する.これらの物質の長期摂取や乱用によって次第にGABAA受容体・複合体の機能低下down-regulationが生じ,耐性・依存が生じる.これらの物質はお互いに交叉耐性があり,離脱症状は類似している.

◆離脱症状

A.アルコール

 最終摂取より7-48時間と比較的短時間で発症し,振戦や全般性けいれん発作などを生じる小離脱と,最終摂取より48-96時間と遅延性に発症し,せん妄や振戦せん妄などを生じる大離脱に分類される.

B.ベンゾジアゼピン系薬物

 短時間作用型では最終摂取から1-2日で,長時間作用型では2-5日で出現し,発症後数日でピークを迎え,1-3週間以内に徐々に消退する.再燃(原疾患の悪化),反跳(薬物によって抑制されていた症状の一時的な著しい再燃)とは対照的に,患者がこれまで経験したことのない症状が発現する.力価が高く,作用時間の短い薬物ほど可能性が高く重症になりやすい.

C.バルビツール酸離脱

 大抵は最終摂取から24時間以内に生じて,2-3日目にピークを迎え,次第に消退する.力価が高く,作用時間の短い薬物ほど可能性が高く重症になりやすい.

・自律神経症状:発汗,頻脈,高血圧,高体温など

・精神症状:不眠,不安,易刺激性,精神運動焦燥,幻覚(幻視など)や興奮を伴うせん妄

・身体症状:悪心・嘔吐,下痢,腹部不快感,振戦,全般性けいれん発作

◆離脱の治療

A.薬物療法

 アルコールおよびバルビツール酸系薬物と交叉耐性のあるベンゾジアゼピン系薬物を投与し,GABA作動性伝達機能を回復させる.最初の

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