◆定義
アカシジアは「静坐不能症」ともいわれる薬剤性錐体外路症状の1つで,原因薬剤の投与開始後か増量後,比較的早期に出現する.身体の違和感(むずむず感,もぞもぞ感)によりじっとしていられなくなり,貧乏揺すり,足の組みかえ,足踏み,徘徊などが顕在化し,主観的苦痛(つらい,我慢できない,落ち着かないなど)を伴う.アカシジアの苦痛に耐えられず自殺に至るケースもある.
◆分類
アカシジアには,原因薬剤投与開始後・増量後3日から2週間以内(遅くとも6週間以内)に生じる急性アカシジア,抗精神病薬投与開始から3か月以上経過した維持治療中に新たに生じる遅発性アカシジア,抗精神病薬減量後・中止後6週間以内に生じる離脱性アカシジアがあり,いずれも3か月以上持続すると慢性アカシジアといわれる.
◆病態・病因
急性アカシジアは,ドパミン受容体遮断作用を有する薬剤により黒質・線条体系のドパミン活性が低下(コリン活性が相対的に上昇)することで生じ,抗パーキンソン病薬が有効である.アカシジアの発現にはさらにGABA活性の低下,ノルアドレナリン系活性の亢進も関与していると考えられている.遅発性アカシジアでは,ドパミン受容体,ノルアドレナリン受容体の感受性が亢進(コリン活性が相対的に低下)しており,抗精神病薬の一時的増量ないし抗パーキンソン病薬の減量・中止が有効となる.
◆疫学
アカシジアは,抗精神病薬ないし抗うつ薬の治療中に生じ,抗パーキンソン病薬の減量後・中止後にも生じうる.従来型抗精神病薬によるアカシジアの頻度は20-30%程度であり,低力価薬剤より高力価薬剤のほうが起こりやすい.第二世代抗精神病薬による発現頻度は従来型より低く10%程度である.抗うつ薬によるアカシジアの頻度は低く三環系抗うつ薬で数%以下とされている.
◆診断のポイント
アカシジアは,一般に抗精神病薬の投与開始後・増量後に比較的すみやかに生じ
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