◆定義
近年全国的に自殺予防への関心が高まっており,自殺企図への精神科的対応は以前にも増して求められている.通常,自殺企図が起こった場合,身体科救急と精神科救急が同時に連携して治療にあたることが最も望ましい.しかしわが国では身体科救急に精神科医が常勤配置されている医療機関は少ない.そこで本項では,精神科救急にまず自殺企図者が受診に至った場合の精神科的対応の骨子について述べる.なお,ここで自殺企図とは,自殺したいという考え(自殺念慮)に基づき,自殺するための具体的行動を行ったものを指す.
◆患者への基本的態度
自殺企図者は背景に精神疾患はもとより,さまざまな複数の人生の課題を抱え,追い詰められて自殺未遂に至り,救急受診する.そこで初めて患者に出会った際には,基本的に受容と共感,傾聴の態度を示す.これによって精神的危機に際して最初に必要な情緒的サポートを患者に与えることができる.頻回に自傷行為を