診療支援
治療

包括型地域生活支援
assertive community treatment (ACT)
高木俊介
(たかぎクリニック・院長(京都))

◆ACTとは何か

 ACT(包括型地域生活支援)とは,統合失調症を主とする重度精神障害者の地域生活を,医療と福祉の多職種からなるチームによる生活現場への訪問を中心として支援する体制である.ACTチームは,精神科医,看護師,精神保健福祉士,作業療法士,臨床心理士,就労支援専門家など多彩な顔ぶれからなる.これらのスタッフが定期的に,あるいは必要に応じて,利用者の自宅や職場を訪問して,医学的治療,広範な生活支援,レクリエーション,リハビリテーション,就労支援,家族支援など精神障害者の療養と支援に必要なあらゆる支援活動を行う.さらに,急性増悪期には24時間365日の危機介入を同じチームが受け持つ.

◆ACTの意義

 このような支援体制は,特に医学的治療を要する疾患と日常生活上のつまずきをきたす障害が表裏一体となって存在している統合失調症の回復に対して大きな意義をもつ.つまり,①多職種による多角的支援,②チームによる継続的支援,③アウトリーチによる生活現場での支援,④24時間の危機介入という特性が,「安全保障感」に乏しい統合失調症にとって心強い助けとなり,その基盤の上に,障害を乗り越えて生活を営んでいく「リカバリー」が生まれる.

◆ACTの方法

 1つのACTチームは10-15人のスタッフからなり,スタッフ1人につき利用者数はおよそ10名である.各スタッフは利用者10人程度の主担当者となってケースマネジメントの責任をもつ.主担当者は,他のスタッフ2-3人と各利用者の支援を行う.この小さな担当チームを個別援助チームIndividual Treatment Team(ITT)といい,ミーティングを密に行い時期に応じた適切な支援を提供する.このように職種にかかわらず利用者への責任をもつACTでは,スタッフ間で自由に意見をいえる雰囲気と平等性が大切である.医師を頂点とした堅固なヒエラルキーのある病院医

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