A.精神症状と身体症状の相互の影響
精神症状のために身体症状に対して無関心である場合がある.このため守るべき生活習慣が守れなかったり,身体疾患の症状を進行させたりするケースがよくみられる.逆に身体症状の存在は抑うつや妄想,せん妄を惹起することがある.精神疾患と身体疾患双方の並行した治療が互いの症状によい影響をもたらすこともしばしばみられる.
B.身体所見把握の難しさ
統合失調症で残遺症状が前景にある患者,連合弛緩により疎通がとれない患者,興奮の著しい患者,うつ病や統合失調症の昏迷患者,認知症の失語や意欲低下がある患者,いずれも訴えがわかりにくい.疎通がよくても通常であれば訴えるであろう疼痛や下血,血尿などを教えてくれないこともある.転倒後に歩いているにもかかわらず実は大腿骨骨折を受傷していた,などというエピソードもありうるのである.よって患者のささいな身体変化を見落とさないことが重要である.