診療支援
治療

外傷性疾患合併症
traumatic disease complications
大槻穣治
(東京慈恵会医科大学附属第三病院救急部准教授)
本田 明
(東京武蔵野病院・内科医長)

Ⅰ.多発外傷

◆疾患概念

 多発外傷で精神科医がかかわる状況として,病院内高所からの墜落・転落が想定される.墜落・転落は自殺企図にしばしばみられる致死性の高い手段である.高所からの墜落・転落は高エネルギー外傷として扱い,精神科単科の病院での発生であれば高次医療機関への搬送が必要であるが,搬送までの間は以下のJATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)に準じた高エネルギー外傷に対する初期診療を行う必要がある.

◆治療方針

 外傷初期診療は第一印象→primary survey→secondary surveyの順に行われる.

A.第一印象

 患者の橈骨動脈を触れ(橈骨動脈が触れれば大ざっぱではあるが収縮期血圧は80mmHg以上),皮膚が冷たく湿っていないか,脈は微弱で頻脈ではないかを,また患者の胸の高さに目をおき,呼吸による胸郭の挙上に左右差がないか(気胸の有無),頻呼吸や努力性の呼吸ではないかを確認し,患者によびかけ名前を尋ねてみる(声が出ていれば気道は開通,名前が言えれば意識状態もある程度よい).以上のことで,その患者の重症度と緊急度を大まかに把握することができる.

B.primary survey

 primary surveyは生理学的な異常から緊急を要する致死的な外傷を早期に発見する手順であり,同時に生命危機を回避する処置である蘇生を行う.

1.気道の評価と頸椎保護(airway)

 気道閉塞・意識レベル低下があれば気管挿管などにより気道を確保し,高濃度酸素を投与する(リザーバー付きマスクで10-15L/分).

 外傷患者は完全に否定できるまで,頸椎損傷があるものとして頸椎カラーによる固定を行う.

2.呼吸状態の評価(breathing)

 SpO2を確認する.

 胸壁運動・呼吸音の左右差の確認.この時点で左右差を認め,ショック,頸静脈怒張を

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