診療支援
治療

家庭と学校のメンタルヘルス
family and school mental health
内田千代子
(福島大学人間発達文化学類教授/同大学子どものメンタルヘルス支援事業推進室)

◆定義とその意義

 メンタルヘルスを生活空間という視点から考えることは重要である.生活空間のなかでさまざまなメンタルヘルスの問題は「事例」として表面化する.狭義の精神疾患でさえ病院で発症するのではなく,必ず生活の場で発症して事例となり,「疾病」として,診断,治療の対象となる.

 家庭と学校は,特に青少年にとっては,生活のほとんどの時間を費やす場所である.その家庭と学校において,不登校,ひきこもりなどの事例が生じたり,統合失調症や不安障害などの狭義の精神疾患が発症したりする.

 精神疾患の予防はメンタルヘルスの重要な柱である.第一次予防(疾病発生予防),第二次予防(早期発見と早期治療),第三次予防(リハビリテーションと社会復帰,再発予防)があるが,発症の予防と再発予防には,家庭と学校は保護的な環境を作りうる大切な場であり,早期介入により軽症化の可能性もある.逆にすべてを悪化させる環境も形成しうる.

 ICD-10およびDSM-5操作診断においても家庭,学校に関与する項目は多数存在し,家庭と学校が「ストレス要因」として,また,臨床的関与の対象として重要であることは疑う余地がない.

◆分類

A.家庭のライフサイクル

 個人のライフサイクルと同様に家庭のライフサイクルが存在し,それぞれの時期で課題達成が要求される.男女が営む家庭を想定した家庭ライフサイクルを事例との関連で見てみる.

 「第1段階:夫婦のみの家庭」では,配偶者からの暴力(DV)および,原家族に依存し,独立できないことから生じる問題も析出する.「第2段階:幼い子どものいる家庭」では,産褥期のうつ病,育児不安,父親母親役割の面での葛藤が関連する問題が生じる.また,虐待の事例化が始まる.「第3段階:青年期の子どものいる家庭」は,学校との関連が強く,不登校,ひきこもり,いじめ,自殺関連行動,摂食障害,学校での暴力,非行,物質依存などが問題と

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