診療支援
治療

サイコオンコロジー
psycho-oncology
内富庸介
(国立がん研究センター中央病院支持療法開発センター・センター長)

◆定義

 サイコオンコロジーとは,がん患者・家族の心理・社会的側面を扱い,その主な目的はがんが心に与える影響と心や行動ががんに与える影響を調べ,quality of life(QOL)の向上,がん罹患の減少,生存期間の延長をはかることにある.

 精神科医は目の前のがん患者の身体的な臨床経過と心の軌跡をイメージしながら,精神医学の基本から,神経科学,臨床心理学,精神薬理学,疫学,倫理学,社会学の知識と技術を駆使して問題を検討し,身体および精神科治療法をいかに組み立て直すか,どうすれば患者・家族の意向を踏まえた最適の治療を提供できるかを検討する.サイコオンコロジーはきわめて高度かつ創造性を刺激する医療を提供している.

 緩和ケアの定義(WHO)は,2002年に変更された.すなわち,生命を脅かす疾患による問題に直面する患者とその家族に対して,痛みやその他の身体的,心理的,社会的な問題,さらにスピリチュアルな問題を早期に発見し,的確な評価と処置を行うことによって,苦痛を予防・緩和することで,QOLを改善する行為である.サイコオンコロジーも緩和ケアも,まさに生命,生活や人生lifeに向き合う医学である.

◆適応-対象は誰か

 がんの全臨床経過,すなわち一次予防から三次予防と遺族ケアにおける心のケアを担う.対象のがん患者,家族,遺族,医療スタッフ,がんハイリスク者(喫煙,飲酒など)が,がんの臨床経過のどの時期に位置するのかを認識することは重要である(図1)

◆分類

 現在,がんの情報(検査結果,診断,再発,抗がん治療の中止など)開示により,患者・家族はまさにlife(生命,生活,人生)の危機に直面させられる.がん治療医は悪い知らせを伝えたあとに生じる落胆,孤立感,疎外感,絶望,再発不安などの通常の心理学的反応への対応から,急性ストレス反応,適応障害,PTSDやうつ病,せん妄や認知症などへの精神医

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