◆定義
地域精神科医療の定義はさまざまであるが,一般的には入院治療以外の精神科医療サービスを意味する.近年では,医療サービスのほかに,社会サービス(福祉サービス,その他公的機関などによるサービス)などを含めた地域精神保健community mental healthという言葉を用いることが国際的には主流である.地域精神保健とは,精神疾患をもつ患者を含む地域住民の精神保健の向上を目的とし,①誰もが利用できるサービスによって,地域住民の精神保健ニーズに対応すること,②精神疾患をもつ者の治療や支援のゴールを明確にし,彼らのストレングス(長所)に焦点をあてたサービスを提供すること,③精神科を含む各種の医療サービスや社会サービス,家族や地域住民によるインフォーマルサービスを含むさまざまな地域サポート,その他の社会資源などをつなぐ支援ネットワークを構築すること,④精神疾患の症状の改善だけでなく社会参加を促すリカバリー志向のサービスを展開すること,そして⑤根拠に基づく実践evidence-based practice(EBP)を推し進めることと定義される.また,地域精神保健サービスをごく簡易な言葉で表現するなら,患者の自宅や居住地の近くで行う医療的,社会的あるいはインフォーマルなサービスである.
◆適応
重症度に関係なく,精神疾患をもつ人すべてが地域精神科医療および地域精神保健の対象となる.例えば,ケアマネジメントは軽い症状の患者と重い症状の患者の双方に実施される.特に,重い症状の患者や退院後の地域生活を控える入院患者にはより集中的なケアマネジメントが提供される.
◆アウトカム
精神疾患をもつ患者のアウトカムは多様である.近年,精神疾患をもった患者の治療や支援のゴールとして「リカバリー」が掲げられている.リカバリーの定義はさまざまであるが,精神症状や機能的な回復だけを意味せず,自身の社会的価