診療支援
治療

アンチスティグマ
anti-stigma
小山明日香
(熊本大学大学院・神経精神医学)
竹島 正
(川崎市精神保健福祉センター・所長)

◆定義

 スティグマstigmaは烙印や偏見と訳される場合が多い.もともとはギリシャ語で奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴を意味し,これをつけることによって汚れた者,卑しむべき者であることを世間に知らしめたものである.スティグマの対象となった人々や集団は,拒絶や差別,さらには排除や迫害の対象にすらなる.

◆国際的な流れ

 1975(昭和50)年,世界保健機関(WHO)の協力のもとに,「うつ病の予防と治療のための国際委員会International Committee for Prevention and Treatment of Depression(ICPTD)」が発足した.ICPTDはその後,世界精神医学会World Psychiatric Association(WPA)が同活動を引き継ぎ,WPA/PTDとして継続的に啓発活動を行っている.また,1996年にはWPAが「The Global Programme against Stigma and Discrimination Because of Schizophrenia(統合失調症に対するスティグマおよび差別と闘う世界的プログラム)」を開始した.Open the Doors(こころの扉を開く)とよばれるこのプログラムには,日本を含む19か国が参加している.このプログラムの目的は以下の通りである.

・統合失調症の特徴と治療オプションについての認識と知識を高めること

・統合失調症に罹患している,または罹患していた人々とその家族についての地域住民の意識を向上させること

・差別と偏見を取り除くための行動を起こすこと

 また,2005年には,WPAにスティグマと精神保健に関するセクションが設立された.

◆国内における流れ

 日本においては,上述したICPTDの発足に伴い,1979(昭和54)年に一般診療科におけるうつ病の予防と治療のための委員

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