精神保健福祉法
精神保健福祉法は,精神障害者の医療および保護,社会復帰の促進,自立と社会経済活動への参加,国民の精神保健の向上などを目的とした法律である.
◆成立の歴史
現行の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下,精神保健福祉法)は,戦後の精神衛生法,さらに精神保健法を改正して制定された.以下に成立の歴史と各改正における変更点を挙げる.
1900(明治33)年に精神障害者に関する初めての法律として「精神病者監護法」が制定された.これにより,それまで行われていた精神障害者を許可なく監禁することは禁止されたが,一定の手続きをとれば精神障害者を自宅に監置する「私宅監置」は認められていた.
1919(大正8)年,「精神病院法」が制定され,公共の責任で精神病院が設立されることになった.しかし,予算の関係から私立の代用病院が作られることも多く,私宅監置も残されたままであった.
精神衛生法 1950(昭和25)年制定
第二次世界大戦後,欧米の精神衛生の考えが導入され,「精神衛生法」が成立した.この法律は,以前の「精神病者監護法」「精神病院法」を廃止して継承したものであり,現在の精神保健福祉法はこの精神衛生法の制定に始まる.
精神衛生法では,私宅監置を禁止し,都道府県に公立精神病院の設置を義務づけた.精神衛生相談所,訪問指導規定が明示され,自傷他害のおそれのある精神障害者の措置入院,保護義務者の同意による同意入院の制度が制定された.
1964(昭和39)年,ライシャワー事件(ライシャワー駐日大使が統合失調症の少年に刺されて負傷した事件)を機に,精神障害者の不十分な医療の現状が社会問題となり,通院・社会復帰対策の充実を目的とした改正の動きが生じた.
1965(昭和40)年,精神衛生法の一部が改正され,保健所を地域精神保健行政の第一線機関として位置づけ,訪問・相談事業を強化すること,通