診療支援
治療

向精神薬の臨床試験
clinical investigation of medicinal product in the treatment of mental disorders
中林哲夫
(医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部・スペシャリスト(臨床医学担当))
猿田克年
(医薬品医療機器総合機構・審議役)

◆定義

 臨床試験とは,介入結果を評価するための前向き研究であり,医薬品,医薬品としての候補物質,心理療法,医療機器や手術などの特定の介入について,治療,診断,または予防の観点からその効果を評価することが目的である.

 わが国の臨床試験は,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26年12月22日付告示第三号,文部科学省・厚生労働省)に基づく「臨床研究」と,医薬品医療機器等法のもとに行われる「治験」に区別されている.しかし欧米では,原則的にすべての臨床試験がGCP(Guideline for Good Clinical Practice)に準拠して実施され,「治験」という概念は存在しない.GCPが担保されない臨床研究の成績は,医薬品や医療機器の承認申請のための評価資料として用いることができないため,その目的に応じて試験計画や実施体制を設定する必要がある.以下では,治験として実施される臨床試験を中心に解説するが,臨床研究の実施においても参考となる事項を扱う.なお,本項は筆者個人の意見に基づいた概説であり,医薬品医療機器総合機構Pharmaceuticals and Medical Devices Agency(PMDA)の見解を示すものではない.

◆精神神経疾患を対象とした臨床試験の特徴

A.試験デザインの特徴

 医薬品や医療機器の開発では,よく計画され適切に実施された臨床試験により,有効性を検証し安全性が示される必要がある.そして薬剤では,臨床試験により有効用量とその用量範囲を明確にする必要がある.医薬品開発および臨床試験の実施計画に関する基本的考え方は,医薬品規制調和国際会議International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(

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