診療支援
治療

病名告知
disease notification
下寺信次
(高知大学准教授・神経精神科学教室)

◆定義

 病名告知には特定の形式はなく,通常はインフォームド・コンセントの一環として行われる.精神疾患の特殊性としては,より重症な精神疾患の場合に病名や病態そのものの基礎的知識を有しないケースも多く,特に入院治療を行う際に精神保健福祉法に規定された本人の意思によらない入院形態をとらざるを得ない場合もある.

 正しい病名と病態を伝え,良好な治療関係を築き,継続的な治療を展開するために,病名告知はきわめて重要である.

◆適応

 病名告知の対象はすべての患者と,必要によってその家族あるいは関係者である.重症度が高い場合や認知症などの進行性の疾患の場合は,家族やケアの提供者と早急に連絡をとり,その後のデイケアなどの心理社会的なサービスを進めていく必要がある.

◆現在の傾向

 うつ病やパニック障害などでは告知をする側も受ける側も比較的きちんとした説明がなされれば,あまり抵抗なく受け入れられる場合が多い.しかしながら,統合失調症schizophreniaそのものの理解や偏見の問題はいまだ解決していない.病名告知後の本人や家族の受けるダメージについて十分配慮する必要がある.統合失調症の場合は,家族を巻き込んだ治療計画を立てなければ半数近くが治療の脱落を起こす.服薬のアドヒアランスも,われわれが考えているよりもはるかに悪いという報告が多い.

◆病名告知の流れ

A.治療者そのものの病名告知の習慣を上げること

 治療への導入にあたり病名告知は本来不可欠なものである.しかしながら,精神疾患では病識の欠如などにより患者本人の理解が得られないことは少なくない.また,家族への病名告知においても偏見等による否認などのため,告知することで時には治療者との関係性を崩すこともありうる.治療への同意能力の不十分な患者の治療への導入にあたっては,通常は少なくとも家族への告知は不可欠である(医療保護入院などへの導入のため).また,病

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