診療支援
治療

乳幼児突然死症候群
sudden infant death syndrome(SIDS)
長村敏生
(京都第二赤十字病院・副院長)

 2012年に厚労省から乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドラインとSIDS診断のための問診・チェックリストが発表され,厚労省,日本SIDS・乳幼児突然死症候群予防学会のウェブサイトから閲覧できる.

A.定義

 それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず,しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない,原則として1歳未満の児に突然の死をもたらす症候群である.

B.疫学

 主として睡眠中に発症し,発症頻度は出生6,000に約1人と推定される.生後2~6か月に多い.厚労省はリスク因子を避ける予防対策として,①母乳栄養,②両親の禁煙,③寝かせるときは仰向け寝を推奨しており,SIDSの発症数は20年前と比べると1/5以下に減少したが,現在も年間数十名が亡くなっている(2018年57名).

C.病態生理

 睡眠中の無呼吸からの回復が遅れるという皮質覚醒反応の異常が想定されており,そのような素因(遺伝子多型の報告もあり)をもった児に呼吸抑制をきたすリスク因子が複数重なったときに,呼吸抑制から回復できず死に至ると考えられている(トリプルリスクモデル,図1).つまりリスク因子はSIDSの直接的な原因ではなく,発症のきっかけに過ぎない.

D.鑑別診断

 SIDSは一疾患単位(内因性疾患)であり,SIDS以外の突然死をもたらす疾患(脂肪酸代謝異常症・ミトコンドリア呼吸鎖異常症などの先天代謝異常症,QT延長症候群などの致死性不整脈,冠動脈異常起始症,劇症型心筋炎,心・神経系先天異常,RSウイルス・百日咳菌・インフルエンザウイルスなど)および窒息や虐待などの外因死との鑑別が必要である.

E.死亡状況調査

 心肺停止状態で搬入された児への蘇生処置が最優先であることは当然だが,一方で死亡状況の確認は診断確定に不可欠である.混乱する救急現場では前述の問診・チェックリストを参考にした聴取が

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