診療支援
治療

頭部外傷
head injury
荒木 尚
(埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター・准教授)

●病態

・頭部外傷は小児救急診療において最も多く遭遇する外因性疾患の1つである.最良のGlasgow Coma Scale(GCS)スコアにより以下のように分類される.

 a)GCS13~15軽症:頻度の95%以上を占める

 b)GCS9~12中等症:重症化しやすく注意深い観察を要する

 c)GCS3~8重症:集学的治療を要する

・発達過程の脳は外力の影響を受けやすい.急激な脳血流量増多による脳充血やけいれん重積による代謝亢進により頭蓋内圧亢進を引き起こしやすい.

●治療方針

A.初期対応

 バイタルサインの正しい評価を行う.必要に応じて呼吸循環動態の安定をはかる.低血圧・低酸素・けいれん発作を合併しないよう留意し,安定を確認してから画像診断へ進む.意識レベルの評価にはJapan Coma Scale(JCS)やGCSを用い,瞳孔所見や運動麻痺など神経学的評価を行う.活動性出血や皮下血腫などを観察する.後頸部圧痛は頸椎損傷の診断に重要である.乳児は大泉門の触診により頭蓋内圧亢進の評価もできる.虐待による受傷を常に念頭におく.

B.治療方針

1.軽症・中等症

a.安静 頭部は30度程度挙上し,光や音声などを控えた環境で十分に安静をとる.嘔気で経口摂取が困難な場合,尿中ケトン体陽性例が多く,補液を行うとよい.

b.高体温(38.5℃以上)を避ける 平熱(35~36℃台)での観察が好ましい.高熱はけいれん発作を誘発しやすい.早期に冷却して対応する.重症例では積極的低体温管理を行い神経保護に努めることもある.

c.高浸透圧利尿薬の投与

 a)グリセリン:生理的代謝を受ける一方,ナトリウム負荷に注意する.新生児や飢餓状態には投与しない.

 b)D-マンニトール:電解質バランス異常を起こしやすい.また体内で代謝を受けないため血管外間質に貯留しリバウンド現象を誘発する.腎機能障害が懸念されるため血液浸透圧320mOs

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