診療支援
治療

psychosocial emergency
上薗 礼
(東京都立小児総合医療センター児童・思春期精神科・医長)

 子どもは,内在する自らの気もちを言語化する能力が未熟で,行動化・身体化で表現される傾向がある.また,特に思春期では心的成長の1段階として大人や権威に対する反発心を抱くこともあり,必ずしも診察に協力できるとは限らない点についても留意する.

 精神科救急医療については,「日本精神科救急医療ガイドライン2015年版」にわかりやすくまとめられている.

 救急受診を要するケースは,その背景に精神病圏,神経症圏,自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性症(ADHD),摂食障害群,知的能力障害(ID),素行障害群,冷遇虐待やネグレクトを受けた児童,などが存在する.

 救急受診時には,①精神科救急か身体科救急かをすみやかに判断する,②意識障害→器質性疾患(児童思春期では少数だが薬物由来のもの)→精神病→心因性疾患の順に除外・鑑別する,③司法的問題の有無を判断する,④帰宅の可否を判断し,あわせて非自発入院も想定する,といった点を念頭に診察を行う.また周産期情報,精神運動発達遅滞,こだわりや多動性・衝動性・注意欠陥性など生来特性を含めた乳幼児期の初期発達や健診のエピソード,保育園・幼稚園や学校における集団適応の状況や学業面,親権者を含めた家庭環境についての情報,児童相談所などの福祉機関介入の有無とその支援方針といった点も可能な限り聴取する.

 当科で行っている各症状への緊急時対応について述べる.

A.精神運動興奮状態

1.病態/特徴

 先述した基礎疾患の精神症状増悪により,興奮して著しく言動のまとまりを欠いた状態に陥る.

2.対応

a.刺激の軽減をはかる 診察が過度な刺激とならないよう,物理的距離を保って対応する.多くの場合最も身近な養育者(両親や同胞,入所施設の担当スタッフ)が精神運動興奮を誘発する刺激となる.受診前の電話相談の際の「声かけを控える」「本人あるいは他者を別の部屋に移動する」など,視覚的

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