診療支援
治療

気管切開
tracheostomy
下島直樹
(東京都立小児総合医療センター外科・医長)

A.適応

 小児における気管切開の適応は,①上気道閉塞に対する気道確保,②長期人工呼吸器管理,③気道分泌物の管理などで,病態としては喉頭狭窄,声門下狭窄,リンパ管腫などの気管周囲の腫瘍,反回神経麻痺,喉頭軟化症,気管・気管支軟化症,中枢神経系の問題などのほか,頭部外傷や脳症後の早期リハビリテーション導入目的や在宅人工呼吸器管理を目指すために早期に計画することもある.家族にも利点,欠点を説明し,症例ごとに病態と長期QOLを考慮して適応を判断すべきである.

B.手技

1.術前準備

 頸部に十分なスペースがあり正中位での伸展,後屈が可能であるか,気管の走行異常や,過去に頸部手術の既往がないかなどを確認する.また胸部単純X線写真やCTから気管の太さ,走行のチェックと,留置中の挿管チューブの太さなどから準備すべきカニューレのサイズを決める.手術時は肩枕を挿入して頸部を正中位で後屈させ,前頸部を展開する.

2.手術手技

 皮膚切開は,輪状軟骨と胸骨切痕の中線上で正中に約2cmの横切開を置く.電気メスで皮下脂肪,広頸筋を横切開し,前頸筋群の筋膜に到達したらこれを正中で縦切開しながら筋鉤で左右に展開することで気管前面に到達する.必要に応じて甲状腺峡部を正中で切開し,輪状軟骨を確認する.

 気管切開は原則第2~3気管輪の高さに造設している.気管を切開する前に予定切開部の左右に支持糸をかけておき,挿入時に牽引用として用いる.気管を縦に切開し,麻酔科に挿管チューブを頭側に引き抜いてもらい,術野からカニューレを挿入する.素早く回路を付け替え,胸が上がっていること,ETCO2の波形が出ていることを確認したのち,麻酔科による聴診で両肺換気になっていることを確認する.カニューレ先端位置に不安があれば,その場で気管支鏡による確認を行うことでより確実性が増す.リークが大きい場合はサイズを大きいものに変更することも検討する

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?