診療支援
治療

採血法
blood draw
居石崇志
(東京都立小児総合医療センター集中治療科)

 手技全般にいえることだが,手技それ自体に固執してはならない.常に患児の状態変化に気を配り,安全に処置を行うことが最も重要である.

A.採血全般について

1.説明と同意

 保護者の理解を得て同意を得たのちに,幼児以上では採血の必要性を本人に説明する.処置の間も声かけをしながら恐怖心を取り除く.

2.感染予防

 本人が感染症患者である場合には,病原体と感染経路に応じた感染対策(空気感染・飛沫感染・接触感染など)が必要である.そして感染症の有無にかかわらず,すべての患児のケアに際して標準予防策を実施する.処置の前後で処置者・介助者ともに手指衛生を徹底する.

3.介助

 抑制のため抑制ボードやバスタオルなどで代用し,固定する.2関節を固定することで大きな体動は抑制が可能である.

4.皮膚消毒

 明確な皮膚障害や感染部位の採血は避ける.アルコールで清拭するが,薬液が残った状態では消毒が不十分であり,疼痛の原因にもなりうるため十分に乾燥してから処置を行う.

5.採血量

 体格の小さい小児は,採血による貧血を意識するべきである.そもそも検査が必要かどうか,検査に必要な最低限の血液量はいくらか,1滴でも無駄にしない努力が必要である.

6.処置中の患者の観察と処置時間

 最も重要なことは,処置を実施している間,処置者・介助者ともに患児の状態変化に配慮することである.基礎疾患によっては採血時の啼泣や手技による疼痛刺激,不整脈の誘発などが引き金となり,呼吸循環不全から心停止に至る患児もいる.あらかじめ処置全体の時間も決めておく.場合によっては処置者を交代する,採血自体を断念する,など柔軟な姿勢が求められる.

B.静脈採血法の手技の実際

 通常はライン確保に使用する血管を避け,前腕の正中・橈側・尺側皮静脈(図2)から以下のとおりに採血を行う.

 a)末梢の色調に配慮しながら駆血し,怒張した静脈を確認する.視認できないが触知で

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