A.疫学
かつてはタバコの誤飲事故が非常に多く,救急外来での胃洗浄がしばしば行われていたが,喫煙者の減少や事故予防意識の向上,適応の見直しにより現在では処置を行う機会は非常に少ない.自験例では鉄剤や三環系抗うつ薬,降圧剤などの薬剤の誤飲で重症化した事例があり,注意すべきである.北米では以前より「one pill can kill」として医療者および保護者への啓蒙が進んでいる.
B.適応と禁忌
一般に摂取後1時間以内が胃洗浄の適応となる.1時間以降では処置による回収率が低下するが,大量摂取や薬剤による消化管蠕動の抑制がある場合,生命に危険が及ぶ場合には処置を行う.
特に石油製品の誤飲では,処置時の誤嚥により重度の化学性肺炎をきたし致死的となりうるため禁忌とされる.強酸,強アルカリも食道粘膜の腐食性が強く禁忌である.
C.方法
a.サイズの選択 経鼻では挿入可能な胃管の径が細く,錠剤など大径の回収に