診療支援
治療

輸液療法
fluid therapy in children
植松悟子
(国立成育医療研究センター救急診療科・診療部長)

●病態

a.病態による輸液の目的

・補充輸液:喪失している水分・糖・電解質などを補う.

・維持輸液:体液の恒常性を維持する.

b.補充輸液が必要となる病態

・循環血液量減少,電解質・糖など溶質の不足.

・不足量や所見により重症度と緊急度を判定する.

c.補充輸液が必要となる病因

・嘔吐,下痢,発汗,血管外への漏出などによる体液の喪失.

・中枢神経性疾患,消化管疾患,敗血症,アナフィラキシー,内分泌・代謝性疾患,広範囲熱傷,熱中症,敗血症など.

d.維持輸液が必要となる病態

・経口摂取が不十分または不可能な場合.

e.維持輸液が必要となる原因

・体調不良,周術期など経口摂取ができない場合.

●治療方針

 病態による輸液治療の目的を明確にしてから実施する.治療中は,持続的または定期的なバイタルサインを含めた患児の評価を行い,常に最新の評価に基づいて治療方針を決定する.小児の敗血症性ショックにおいて,心機能低下および末梢血管抵抗の上昇している例がある.

A.補充輸液

1.輸液の種類

 細胞外液であるリンゲル液,乳酸・酢酸・重炭酸リンゲル液,生理食塩液を選択する(表1).

2.輸液量

 喪失している量を補充することが原則.小児では発育が著しく体重測定による脱水の評価は正確でない場合が多い.臨床所見から脱水の程度を評価する方法もある(表2).

a.ショック 循環血液量減少性ショック(嘔吐・下痢などによる脱水など),血液分布異常性ショック(敗血症,アナフィラキシーなど)を呈している場合には輸液負荷として1回10~20mL/kgを5~10分かけてボーラス投与.呼吸・循環動態を再評価しながら,必要に応じて反復投与する.

 心機能低下を伴う場合には1回5~10mL/kgを10~20分かけて投与.投与中に呼吸・循環動態の増悪がないか細心の注意を払う.

 超音波検査で心収縮能,下大静脈の状態(径による評価:虚脱や拡張,呼吸性変動)を評価

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