診療支援
治療

経静脈栄養
parenteral nutrition
西村奈穂
(国立成育医療研究センター集中治療科・診療部長)

A.適応

 経静脈栄養は非生理的な栄養方法であり,合併症として腸管細菌叢の変化,腸管機能低下,代謝異常,胆汁うっ滞,肝障害などに加え,気胸や血栓,感染症などカテーテル挿入に伴う合併症もある.そのため成長・発達のために経腸栄養が十分投与できない場合に限って,選択される治療法である.

 経腸栄養が長期間確立できない場合に選択されるが,その期間については乳児1~3日,小児・学童4~5日,成人7~10日間と考えられる.新生児では飢餓に耐えられる日数が1~3日と考えられ,経腸栄養が開始できない場合には生後2日以内に開始するべきとされている.栄養状態が極度に悪い場合の経静脈栄養開始時期についてのエビデンスはない.

B.方法

 経静脈栄養のアクセスには末梢静脈ラインと中枢静脈ラインがある.末梢静脈ラインでは,特別なカテーテルを挿入しなくてもよく簡便である一方で,投与できる電解質や浸透圧に限界がある.糖12.5%,カリウム40mEq/L,浸透圧では900mOsm/Lが末梢静脈ラインで投与できる上限となる.通常2週間以上の経静脈栄養が必要とされる場合には,中心静脈ラインからの投与が推奨される.

 中心静脈ラインには,末梢から挿入できるPICC(peripherally inserted central catheter)と中心静脈カテーテルに分けられる.中心静脈ラインはさらに皮下トンネルのない中心静脈ライン,皮下トンネルのあるカフ付き中心静脈ラインに分けられる.前者は1~2週間の短期の経静脈栄養が適応となる.抜去が簡単であること,ガイドワイヤー越しの入れ替えができるメリットがある.しかし感染が問題となり,特に大腿で感染率が高い.後者は外科的に挿入される.皮下にトンネルを作って静脈に留置する.血管としては内頸,側皮静脈が選択される.在宅経静脈栄養など長期管理が可能となり,ほかのカテーテルよりも感染率が低

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