診療支援
治療

局所麻酔法
local anesthesia
小原崇一郎
(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)

 小外傷に対する処置のための局所浸潤麻酔の成功の秘訣は,局所麻酔薬の特徴および手技に対する十分な理解である.

A.局所麻酔薬の選択

 小外科処置に対しては,アミド型局所麻酔薬の1つであるリドカインが汎用されている.リドカインは,作用発現時間が早く(4~10分),またアドレナリンや緩衝剤の添加により発現時間を短縮することができ,麻酔後すぐの洗浄・縫合を可能にする.作用持続時間は,麻酔薬による血管作用や麻酔部位の血流,アドレナリン添加の有無に依存するが,アドレナリン添加なしで30~120分,アドレナリン添加あり(1:200,000)で60~240分である.

 リドカインの単回最大投与量は,アドレナリン添加なしで4.5mg/kg(1%製剤で0.45mL/kg),アドレナリン添加ありで7mg/kg(1%製剤で0.7mL/kg)である.乳児や低蛋白血症を有する児では,最大投与量を70%まで制限する.

 アドレナリン添加薬剤の投与は,指趾や鼻尖部,耳介,陰茎,血行障害を認める部位には禁忌である.

B.局所麻酔薬による有害事象

1.心因反応(迷走神経反射)

 急激な徐脈,低血圧,顔面蒼白,めまい,失神.

2.添加アドレナリンに対する反応

 頻脈,高血圧,頭痛,不安感.

3.局所麻酔薬中毒(中枢神経系・心毒性)

 a)中枢神経系の徴候として,舌・口唇のしびれ,金属様の味覚に始まり,多弁,呂律困難,興奮,めまい,視力・聴力障害,ふらつき,けいれん,さらには意識消失,呼吸停止がみられる.

 b)心毒性の徴候として,初期の神経徴候に伴い高血圧,頻脈,心室性期外収縮が生じ,その後,洞性徐脈,伝導障害,低血圧,循環虚脱,心静止へ進展する.心電図上はPR延長,QRS幅の増大が特徴的である.

 c)局所麻酔薬中毒の3/4の症例では,使用後5分以内に中毒症状が出現する.しかし過量投与に伴う遅延発症の場合は,組織からの移行や活性型の

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