診療支援
治療

小児診療の基本
桃井眞里子
(自治医科大学・名誉教授)

 子どもの診療の特性は,年齢を問わず情報の多くを保護者に依存することにあり,適切な診療のためには十分で迅速な情報収集能力を獲得する必要がある.同時に,彼らがもつ不安と問題をしっかりと受け止めているという姿勢を常に示すことで,患児と保護者の双方から信頼感を得て,より適切に診療を進めることができる.以下,その基本を記す.

A.診察

 問診情報の大部分は保護者からであり,症状は患児から語られない場合が多く,保護者は何を伝えればよいかはわからないため,診療に必要な情報を引き出す問診は最重要である.主訴に関連した問診項目,視診項目をセットで念頭におく.詳細な問診は診断の鍵であると同時に,信頼関係の第一歩でもある.

 身体診察は,年齢が低いほど視診が重要になる.頻度の高い主訴に関連した視診項目は自分なりのセットをもっておくと見逃しがない.身体診察は常に話しかけながら,あるいは問診の不足を補いながら実施する.診察中に所見を不用意に述べることは不安を増大させるので避ける.

 急性疾患の場合には,検査所見の変動よりも症状の変化が先行することが多いので,頻回の診察が基本である.診察前に,どの所見をとりに行くのかを明確に意識して診察する.

B.検査

 心身の負荷を最小限にするために,検査は目的を明確にして必要最小限が望ましい.理解できる年齢で状態に緊急性がなければ,採血も本人に十分説明して納得してから実施するのがよい.

 鎮静を要する検査は,年齢や必要な鎮静の深さに応じて入院や麻酔科医対応などを考慮し,事故防止をはかる.

C.治療の説明と納得

 緊急時には患児からの十分な理解と納得は得にくいが,保護者への十分な説明と同意はもちろんのこと,患児への説明と納得を得る努力はすべきである.処方においても,患児にも薬の必要性を可能な限り説明して服薬の納得を得るように努めることで,治療の継続がはかりやすくなる.

D.治療

 薬物

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