医療を行うにあたり合理性をもって判断するために守るべき規範(ルール)が,医療倫理である.ビーチャムとチルドレスは医療において遵守されるべき倫理原則として,自律の尊重(respect for autonomy),善行(beneficence),無危害(non-maleficence),正義(justice,公平性)の4つの原則を提示した.
A.自律尊重の原則
患者が自分自身のことについて判断,選択したことを尊重することを求める原則である.一般に,医師は判断能力を有する患者の同意なく医療行為を行うことは認められていない.一方,判断能力を有する未成年者の自律を尊重するべきなのかという「自律尊重の原則」と「善行の原則」の対立について,わが国ではコンセンサスを得られていないのが現状である(例:親の同意だけで,逆に子どもの同意だけで,医師は医療行為を行ってもよいのか?).なお,世界医師会(WMA)は成