診療支援
治療

小児への医薬品適応外使用の現状と問題点
中村秀文
(国立成育医療研究センター研究開発監理部・開発企画主幹)

A.「適応外使用」とは

 「適応外使用」は,厳密には以下の状態を意味する.

 a)添付文書の「効能・効果」「用法・用量」から外れた医薬品の使用

 b)特定の年齢に対して「禁忌」「安全性が確立していない」などとされている医薬品の使用

 さらに臨床現場では,以下のような場合にも「適応外使用」という言葉を用いている.

 a)国内で販売されていない医薬品を輸入して用いている(正式には「未承認薬」)

 b)試薬を転用して用いている

 c)剤形を変更(カプセルや錠剤の粉砕,注射薬を経口投与など)して用いている

 これらをすべて含めると,わが国における小児頻用医薬品の約70%程度は,「適応外使用」であるといわれている.

 医師の処方は「医薬品の薬事法上の承認」に縛られることはなく,上述のどのような処方も行うことは医師法違反ではない.しかしながら添付文書の記載どおりに使用していない「適応外使用」は,訴訟などの際に不利になることがある,副作用被害救済制度の対象とならない可能性がある,副作用情報の収集が適切に行われない可能性がある,などさまざまな問題を抱えている.

 わが国では原則として薬事法上の承認を得られて初めて保険上の支払いを受けられるために,適応外使用に対する保険による支払いが行われず病院の負担となることがある.現状では多くの薬が当たり前のように使われてしまっており,保険で査定されることなく用いられることが多いが,症状詳記がなければ査定されてしまう,あるいは特定の都道府県では査定される,などの問題が起きることがある.適応外使用はぜひとも解決されねばならないし,特に新しい医薬品については小児の適応が必ず取得されるよう取り組みを進めるべきであろう.

B.適応外使用問題解決のための対応

 適応外使用解決のためにいくつかの方策がとられている.厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」では,医療上の

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