診療支援
治療

患者教育のノウハウ
how to educate patients
西村龍夫
(にしむら小児科・院長(大阪))

A.小児の診療の特異性

 小児診療がほかの診療科と最も異なるのは,患者が子どもであり,診療内容を十分に理解することが困難な場合が多いことである.そのため患者が低年齢になればなるほど,保護者とのコミュニケーションが重要となる.

 さらに子どもは成長,発達の過程にある.小児の患者はこれまで育ってきた生育環境のなかでさまざまな疾患を発症したのであり,診療後には同じ環境に帰っていくことになる.診療の場では,普段の生育環境を常に意識しておかなくてはいけない.

B.小児における患者教育

 患者教育と治療は小児診療の両輪である.軽症患者の多いプライマリケアにおいては,治療よりむしろ患者教育が診療の主体になる.単なる発熱や咳嗽で受診した場合でも,保護者の立場では不安を感じるのは当然であり,理解と共感を示さなければいけない.

 乳幼児の健康トラブルの多くは感染症に由来するものであるが,なぜ症状が出ているか,可能な限り簡単な言葉で病態を説明することである.成長期に頻繁に起こる「風邪」への対処を理解してもらうことが,小児における患者教育の第一歩である.

 説明なく単に対症療法を行うだけであれば,保護者に子どもの風邪症状は必ず止めなくてはいけないものだと教えていることになる.特に乳幼児の患者には「治療すること」のリスクを常に念頭におかなくてはならない.軽微な症状でもさまざまな治療を要求する保護者も多いが,真に必要な医療と保護者の希望する医療のすり合わせも患者教育の一環であるといえる.

 一方,専門性の高い疾患になるほど治療の必要性が出てくる.この場合も疾患のリスクをよく説明し,治療した場合に予測される不利益と比較して説明することが大切である.

 保護者に治療のリスクとベネフィットを理解してもらうことが患者教育につながる.頭ごなしに治療をせまるようなパターナリズムは小児医療にはそぐわない.どのような医療行為も,患者

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