診療支援
治療

新生児の栄養
nutritional management of neonate
宮沢篤生
(昭和大学小児科学・講師)

A.概念

 栄養管理は保温,感染管理とともに新生児医療の3原則の1つとされている.適切な栄養管理は新生児・乳児の発育に不可欠であるとともに,近年では知的発達や生活習慣病などの発症にも影響を及ぼしうることが明らかになっている.

 消化管機能や各栄養素の代謝機能が未成熟な新生児にとって,母乳栄養は栄養学的,生理学的にも最も適した栄養方法である.さらに母乳中にはさまざまな生体防御因子が含まれており,新生児の腸管における免疫機構の未熟性を促進させるとともに,免疫機構が成熟するまでに不足する免疫因子を補完するといった作用がある.

 また母乳栄養を介した母児の接触は,母児間の愛着形成を促すうえでもきわめて重要な役割を果たしている.小児科医は母乳栄養を推進するための基本的知識をもち,母乳育児を希望する母親を支援することが望まれる.

B.健常新生児(主に正期産新生児)に対する栄養管理

1.母乳栄養

 新生児の栄養管理の基本は母乳栄養であり,その支援においてはWHO/UNICEFによる「母乳育児がうまくいくための10のステップ(母乳育児成功のための10カ条2018年改訂版)」(http://jalc-net.jp/dl/10steps_2018_1989.pdf)を基本理念とする.出生直後から分娩室で行われる早期母子接触ならびに早期授乳は母子愛着形成,感染予防,母乳分泌促進などの効果があり,生後4か月までの母乳率向上や母乳期間延長に寄与することが証明されている.

 過去には多くの分娩施設において初回哺乳時に5%ブドウ糖液がルーチンとして与えられてきたが,ブドウ糖液投与による脱水,黄疸,低血糖の予防効果やその後の母乳栄養に与える効果を支持するエビデンスは存在しない.出産後数日の間に分泌される初乳には分泌型IgA,ラクトフェリン,オリゴ糖などの免疫調整因子やインスリン成長因子(IGF-1),上皮成長因子(EG

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