A.輸血前検査(生後4か月以内の乳児)
児の産生する抗A,抗B抗体は出生時には認められず,また母親からの抗A,抗B抗体が児に移行している可能性があるため,以下の配慮が必要である.
1.血液型検査
オモテ試験のみで判定する.異なる2検体で二重チェックを行う.血液型判定が間に合わない緊急時には,O型赤血球濃厚液を輸血する.
2.交差適合試験
ABO同型の赤血球製剤で主試験を行う.なお採血が困難な超低出生体重児では,母児のABO血液型が同型の場合,児がO型の場合,母親がAB型の場合に限り母親の血液で主試験を行うことができる.
B.輸血血液に関して
1.移植片対宿主病の予防
必ず15グレイ以上の放射線を照射した血液(凍結保存された製剤は除く)を使用する.
2.高カリウム血症の予防
急速輸血,交換輸血などの大量輸血,極低出生体重児の生後早期に輸血する赤血球液は,カリウム吸着フィルターを使用する.
3.サイトメガロウイルス(CMV)感染の予防
日赤血液センターから供給される輸血用血液は白血球が除去されており,CMV感染を生じる可能性はきわめて低いが,CMV抗体陰性または陽性が確認されていない母体から出生した児に修正在胎44週未満の時期に行う輸血は,可能であればCMV抗体陰性血を使用する.
C.赤血球輸血
1.輸血基準
a.急性出血に対する輸血 循環血液量(85~100mL/kg)の10%以上の急性出血は赤血球輸血の適応である.輸血量,輸血速度は出血量や出血速度に応じて調整する.通常10~20mL/kgを10~60分ほどで輸血する.
b.未熟児貧血などHbを指標にした輸血 全身状態が安定している児ではHb 7g/dL,慢性的な酸素依存症の児ではHb 11g/dL,生後24時間未満の新生児や集中治療を受けている新生児ではHb 12g/dLを輸血の目安とする.
2.投与方法
1回の輸血量は10~20mL/kgとし