本項ではヘリコプターなどによる空路搬送ではなく,酸素ボンベを搭載した一般的な救急車を使った陸路での新生児搬送に焦点を絞って述べる.
新生児が陸路搬送される状況は,下記などが考えられる.
a)自宅分娩児に対する行政救急車による新生児救急搬送
b)一般分娩施設で発生したハイリスク児の専門施設への搬送(三角搬送含む)
c)児の状態安定に伴う専門施設から地元施設への戻り搬送
d)さまざまな理由による転院,施設間搬送
日常的に新生児搬送を行っているチームでは適応や運用などのマニュアルはすでに整備されているので,搬送に不慣れな施設で留意すべき点をあげる.
A.新生児搬送の適応
NICUなどの新生児専従看護単位をもたず,チームとして安定した新生児管理を提供できない施設においては,以下のようなケースは搬送を考慮する.
a)呼吸障害が遷延する児,酸素継続投与が必要な児
b)仮死児
c)輸液管理を必要とする児
d)明らかな外表大奇形
e)早産,低出生体重
f)早発性黄疸
g)体温異常
h)高度腹部膨満,頻回嘔吐,胆汁性嘔吐,吐下血
i)哺乳不良,活力不良,体重増加不良
j)一部の母体疾患児〔コントロール不良な糖尿病,Basedow(バセドウ)病,自己免疫疾患,薬剤など〕
これらはいずれも迅速な対応を要するか慎重なモニタリングが必要な児であり,専門チームによるフルタイムの診療が必要である.また母子関係確立のために,母体の搬送先病院への転院も併せて検討する.
B.搬送移動中の安全確保
救急車自体の交通事故は日常的に発生しており,ドライバーが安全運転を心がけるだけでなくスタッフと被搬送者の安全の確保も必須である.
1.新生児の安全
搬送中は閉鎖式搬送用保育器もしくは開放式保育器に児を置くことになるが,衝突事故の際に児が固定されていなければ壁面などに叩きつけられて死に至りうる.ベビーボードモデル676など