●病態
・胎児は母体よりカルシウム(Ca)の供給を受けるため,出生直後のCa値は成人とほぼ同程度である.その後,生後24時間でイオン化Ca(iCa)1.1~1.35mmol/L(血清Caは8~9mg/dL)まで低下がみられるものの哺乳が確立すれば,その後は自然に上昇があり,生後2週間でおおむね成人と同程度まで回復する.このように生理的に新生児は一過性に血清Caの低下がみられるものの,特に下記のようなリスクがなければスクリーニング検査や介入は行われない.
・早産や胎児発育遅延,新生児仮死,22q11.2欠失症候群などが低Ca血症のリスクとなる.また母体高PTH血症や母体マグネシウム(Mg)投与,児の高リン(P)血症や低Mg血症も低Ca血症の原因となりえる.
・このようなリスクを有する場合は,経時的な評価を行い,必要時には低Ca血症の治療を行う.
・症状をきたすほどの低Ca血症となることはあまり多くないが,重度の場合はけいれんやテタニーなどの神経・筋症状,無呼吸などの呼吸障害,嘔吐などの消化器症状がみられることがある.
・超低出生体重児では非乏尿性高カリウム血症から心室性頻拍となることがあり,低Ca血症がその危険因子となるので,予防的Ca投与が行われる.
A.評価
・血清CaよりもiCaのほうが生理活性を反映するため,低Ca血症の評価は原則iCaを用いる.
・低Ca血症の定義は以下a),b)である.
a)体重1,500g未満:iCa<1.0mmol/Lもしくは血清Ca 8mg/dL未満
b)体重1,500g以上:iCa<1.1mmol/Lもしくは血清Ca 7mg/dL未満
・上記のリスクのある児の急性期のNICU管理では,経腸栄養が確立するまでは1日1回以上の評価を行っている.低Ca血症がみられた場合は,血清P,Mgの評価も行う.
●治療方針
A.適応
出生体重1,500g未満の児では,初期輸液より
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