●病態
・呼吸窮迫症候群(RDS)は肺サーファクタントの分泌不全のため,肺が虚脱するとともにコンプライアンスが低下し,呼吸不全をきたす新生児特有の疾患である.症状は陥没呼吸,呻吟,多呼吸,チアノーゼである.
・早産であればあるほどRDSの発症率は上昇し,在胎24週であれば約90%の児が発症する.在胎35週の児であれば新生児が呼吸を行うために,十分な量の肺サーファクタントが分泌されていることが多いため,発症率は10%程度となる.
・一方,それ以降の在胎週数でも,妊娠糖尿病など肺サーファクタントの分泌が阻害されるような病態があれば,RDSを発症する可能性はある.また,肺炎や胎便吸引症候群などでは分泌された肺サーファクタントが活性を失い,RDS同様の症状を呈することがある.
・新生児の呼吸窮迫症状は肺炎,敗血症といった感染症や先天性心疾患など多くの疾患で認められる症状であるため,胸部X線やマイクロバブルテスト,血液検査,心臓超音波検査などを行い,その症状がRDSによるものであるかを診断する必要がある.
●治療方針
RDSは現在,すみやかに適切な治療を行うことで,一般的には重篤化することは少なくなっている.治療としては症状が軽度であれば,持続陽圧呼吸法(CPAP)や人工呼吸管理で改善することもある.しかし病態から考えると,人工肺サーファクタント(サーファクテン)の気管内投与を行う方法が最も効果的である.また児の治療ではないため詳細は割愛するが,出生前母体ステロイド投与がRDSの発症を減少させることが知られている.米国産婦人科学会では,出生する新生児のRDSの予防のために,7日以内に早産で出生すると予想される場合には母体ステロイド投与の検討を推奨している.
RDSに対する呼吸管理法は,肺胞の虚脱を防ぐことが重要であることから,呼気終末陽圧(PEEP)をかける必要がある.強い呼吸苦を認めていなけ