●病態
・中心静脈血のヘマトクリット(Ht)値が65%以上,ヘモグロビン値が22g/dL以上と定義されている.大部分が無症候である.
・病因は胎内での赤血球の造血過多と,胎児への輸血過多である.
a)造血過多:子宮内発育遅延,胎盤機能不全,母体高血圧,母体の喫煙,染色体異常(13,18,21トリソミー)
b)輸血過多:臍帯結紮遅延,双胎間輸血症候群,母児間輸血,母体糖尿病など
・初期の徴候は末梢性チアノーゼ,多呼吸,不活発,筋緊張低下,哺乳力低下,易刺激性,振戦など.重症のものでは心不全,腎不全,けいれん,末梢の壊死,壊死性腸炎.
・赤血球破壊により産生されるビリルビン値の上昇をきたす.
●治療方針
A.部分交換輸血
症候性の場合,組織血流を増やし,組織ダメージを軽減することを目指す.または無症候であっても静脈血Ht 75%以上の場合に限って実施する.
a)瀉血量:[(現在のHt値)-(目標Ht値)]×体重(kg)×血液量(mL/kg)/(現在のHt値)
・血液量:正期産児で80~90mL/kg,早産児で100mL/kg
・目標静脈血Ht値は55~60%程度
b)置換溶液;生理食塩液
c)瀉血には末梢動脈,置換溶液を末梢静脈から投与し,瀉血と置換溶液投与を同じ用量,同じ速度で実施
※ヒールカット採血ではHt値を過大評価しやすいため,治療決定の際には静脈血あるいは動脈血データを用いる.
B.モニタリング,もしくは早期哺乳や補液のみ(無症候性の場合)
a)無症候性で血液量が正常または増加:心肺機能,血糖のモニタリングのみ
b)血液,血漿量の減少が想定される場合:早期授乳または必要に応じて生理食塩液または糖液の補液
c)正常血液量,血漿量と想定される無症候性の児:繰り返し静脈血でのHt値を測定し,75%以上となるようであれば部分交換輸血を考慮
経過を通して,高ビリルビン血症の有無を確認し,必要