診療支援
治療

新生児腎不全
renal failure of the newborn
金子孝之
(新潟大学医歯学総合病院・総合周産期母子医療センター・副部長)

●病態

・腎機能低下により,乏尿や体液過剰,呼吸循環障害,電解質・酸塩基平衡の異常,高窒素血症などさまざまな病態をきたす疾患が腎不全である.新生児期の腎機能低下は,急性腎障害(AKI:acute kidney injury)や慢性腎臓病の初期症状として認められるが,新生児期に両者を鑑別することは困難である.

・新生児腎不全の原因として,①循環血液量の減少や循環不全により腎血流量の低下をきたす腎前性,②腎実質の障害や先天的な腎形態異常による腎性,③尿路の閉塞や排尿障害に伴う腎後性があげられる.

・診断は血清クレアチニン(Cr)値や尿量を指標にした,新生児修正KDIGO診断基準と重症度分類〔AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会(編):AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016.p73,表3〕を参考にする.

●治療方針

 呼吸循環動態など全身状態の管理,原因に対する治療が基本である.さらに病態に応じて水分管理や栄養管理,薬物療法などを行う.

 胎児の形態異常や羊水量の異常の有無,母体の薬物投与歴,新生児仮死の有無など周産期背景を確認し,腎機能低下のリスク要因を評価する.浮腫や呼吸障害などの身体所見,血圧や尿量,体重の増減などのvital signから児の全身状態を評価する.血液検査や尿検査でのCr値や電解質濃度,浸透圧などの評価は,原因の鑑別に有用である.ただし未熟性の強い早産児の場合は,基準値が異なるため注意が必要である.児の超音波検査による腎臓や尿路の形態異常の評価,腎血流や心機能,循環血液量の評価も有用である.

 以上のような評価を基に,腎機能低下の原因を鑑別し治療方針を検討する.

 循環血液量の減少に対する水分負荷,敗血症に対する抗菌薬投与,腎毒性の薬剤の投与中止,尿路閉塞に対するドレナージ療法など,原疾患に対する治療が基本である.高K血症や低Na血症,低Ca血症などの電解質

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