診療支援
治療

Marfan症候群
Marfan syndrome
村松友佳子
(名古屋大学医学部附属病院小児科)

●病態

・Marfan(マルファン)症候群は,細胞外微小線維の主成分であるフィブリリンの異常により,全身の結合組織の障害を生じる疾患である.

・15番染色体15q21に位置するFBN1が原因遺伝子で,常染色体優性遺伝形式をとる.

・大動脈基部拡張などの心血管系,高身長や細長い指などの筋骨格系,水晶体偏位などの眼の症状が主要であるが,自然気胸やヘルニア,脊髄硬膜腔拡張などの症状もきたしうる.

●治療方針

 診断には改訂Ghent(ゲント)基準を用いる.2010年の改訂により,大動脈基部拡張,水晶体偏位,遺伝子変異に重点がおかれた.現在わが国では,基準に適合した施設でのみMarfan症候群の遺伝学的検査が健康保険で可能である.診断後はガイドラインなどを参考に合併症のチェックとフォローアップを行う.

A.心血管系

 大動脈拡張,大動脈弁閉鎖不全,大動脈解離,大動脈破裂,僧帽弁逸脱,僧帽弁閉鎖不全などを認める.大動脈基部拡張は年齢とともに進行するため,早期介入による発症予防が重要である.拡張の評価は年齢と体格から算出した標準値をもとに行う.β遮断薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は大動脈基部拡張予防に効果がある.基部径が5.0cmを超える場合や急速に拡大する場合,重度の大動脈弁逆流を認める場合には手術適応となる.女性の場合には基部径が4.0cmを超えると,妊娠出産時に拡張が急激に進行して大動脈解離のリスクが高まる.

B.眼

 水晶体偏位,近視,網膜剥離,緑内障などを認める.近視は小児期に急速に進行するため,弱視予防のために幼児期から眼鏡などによる視力管理を行う.水晶体偏位が高度であれば手術適応となる.

C.筋骨格系

 側弯,胸郭変形,扁平足などを認める.装具装着や手術が考慮される.

D.その他

 バスケットボールなどの接触性の高いスポーツやウエイトリフティングなどのアイソメトリック運動,スキューバダイビング

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