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治療

VACTERL連合
VACTERL association
吉橋博史
(東京都立小児総合医療センター臨床遺伝科・医長)

●病態

・連合とは,併存する可能性が高い形態異常の組み合わせを意味する.

・椎体異常(V;vertebral defects),鎖肛(A;anal atresia),心疾患(C;cardiac malformation),食道閉鎖を伴う気管食道瘻(T,E;tracheoesophageal fistula with esophageal atresia),腎奇形または橈骨異形成(R;renal or radial dysplasia),四肢の異常(L;limb anomalies)などの形態異常は高頻度に併存する.

・上記の頭文字を組み合わせた疾患概念がVACTERL連合である.VATER(ファーター)連合は心疾患(C),四肢の異常(L)が追加される前の呼称である.

・出生頻度は10,000~40,000出生に1人,多くは孤発例である.

・診断基準はなく,四肢,胸部,腹部に1つずつ,あるいは胸部,腹部に2つずつの所見を認めた場合に診断され,特徴的な顔貌はない.

・多系統にわたる病態の発症機序は不明である.

・橈骨側の軽微な症状(三関節拇指,拇指付着位置異常,拇指球低形成など)は橈骨異形成と同義である.

・肛門の位置異常は,発生学的に鎖肛と同義である.

●治療方針

 根本的な治療法はなく,対症療法が中心となる.心疾患,食道・気管の異常,消化管奇形は乳幼児期早期の生命予後を左右する.併存しうる,その他の形態異常についても積極的に検索する.

A.椎体異常,橈骨異形成,四肢の異常

 画像検査により椎体,肋骨を評価する.長期的な経過観察,整形外科的治療を行う.

B.鎖肛,気管食道瘻

 排便機能の評価,外性器異常を確認する.外科的治療を行う.

C.心疾患,腎奇形

 超音波検査による形態診断や機能を評価する.内科的または外科的治療を行う.

 乳幼児期の発達遅滞を認めることがあるが,一般に生命予後は良好で精神遅滞を伴わない

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