診療支援
治療

小児科診療における遺伝カウンセリング
genetic counseling in pediatrics
倉橋浩樹
(藤田医科大学総合医科学研究所分子遺伝学研究部門・教授)

A.遺伝カウンセリングとは

 疾患の遺伝学的関与について問題を解決するためのプロセスであり,①疾患の発生や再発リスクの評価,②正確かつ最新の情報提供,③自律的な決定,リスクや状況への適応を目指したカウンセリングが含まれると定義されている.遺伝カウンセリングの専門家としては,医師には臨床遺伝専門医,非医師には認定遺伝カウンセラーという学会認定の資格がある.

B.小児期の遺伝カウンセリング

 遺伝学的診断の前後に必要とされることが多い.従来は,遺伝学的診断は臨床診断に依存しており,特に先天奇形症候群の領域でのdysmorphologyに精通した専門医の匠の目の存在が重要な役割を果たしていた.近年は急速に診断が遺伝学的検査,すなわち遺伝子・染色体分析に移行し,専門医は高度な分子遺伝学的な知識が必要となってきている.

 小児期の遺伝学的診断の目的は大きく分けて,①本人の合併症の予測や予防法に関する情報提供,②次子のリスク算定,の2つの要素からなる.遺伝学的検査の特徴は不変性,予見性,共有性といわれる.このなかで予見性や不変性という特徴を利用して将来の合併症の予測などを行うわけだが,逆に検査結果が一生変わらないこと,すなわち被検者の将来が確定してしまうことに対する親の心理的葛藤に注意を払う必要がある.そういう意味では,遺伝学的検査は親子関係が未成立の段階で行うべきではなく,複数回の遺伝カウンセリングのなかで罹患児の受容が確認されてから行うべきであろう.

 一方,特に母親には妊娠中の自分の行為に対する自責の念があり,遺伝学的診断で原因が同定されると安心する.何かもやもやしていたものがすっきりしたという表現をされる場合もある.逆に診断がつくことで,保因者や母親の高齢などから親の責任を追及するような形になるのは避けなければならない.

 次子の計画がある両親には遺伝学的診断の価値は大きい.未診断症例が孤

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