診療支援
治療

肝型糖原病
hepatic glycogenosis
福田冬季子
(浜松医科大学小児科学・准教授)

●病態

・肝型糖原病は,グリコーゲン代謝経路の酵素やトランスポーターの異常により,グリコーゲン合成や分解の障害が引き起こされる疾患である糖原病のうち,肝が罹患する疾患群.

・Ⅰ型(Ia型:グルコース-6-ホスファターゼ欠損症,Ib型:グルコース-6-リン酸トランスロカーゼ欠損症),Ⅲ型(グリコーゲン脱分枝酵素欠損症),Ⅳ型(グリコーゲン分枝鎖酵素欠損症),Ⅵ型(肝グリコーゲンホスホリラーゼ欠損症),Ⅸ型(ホスホリラーゼキナーゼ欠損症)がある.

・組織にグリコーゲン〔Ⅲ型ではホスホリラーゼ限界デキストリン(PLD),Ⅳ型ではアミロペクチン様グリコーゲン〕が蓄積する.

・Ⅰ型,Ⅲ型,Ⅵ型,Ⅸ型の主要症状は肝腫大,低血糖,成長障害.Ⅳ型では低血糖は認めず,肝脾腫などを生じる.

・「新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019」(日本先天代謝異常学会編)参照.

●治療方針

A.Ⅰ型糖原病

1.急性期の治療

 食事摂取不良時に低血糖,ケトーシス,代謝性アシドーシスが発生する.経口摂取不可能なときには直ちにグルコースの静脈投与後,持続点滴に移行.上記により改善されない代謝性アシドーシスは,炭酸水素ナトリウムにより補正する.

2.慢性期の治療

a.低血糖予防 少量頻回食や夜間持続注入.糖原病用フォーミュラ,非加熱のコーンスターチ(食品)を投与.乳児では2~3時間,小児では3~4時間,思春期以降では4~6時間以上の空腹を避ける.ショ糖,果糖,乳糖,ガラクトースの摂取を制限する.

b.高尿酸血症の治療

Px処方例

アノプロリン錠 1日10mg/kg 1日3回に分けて

3.高脂血症の治療

Px処方例

ベザフィブラートSR錠(200mg) 1回1錠 1日2回 朝・夕食後(成人量)

4.Ib型の好中球減少症の治療

 G-CSF投与.

B.Ⅲ型,Ⅵ型,Ⅸ型糖原病

 低血糖の急性期と慢性期の治療を行う.ショ糖,果糖,乳糖を1

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