果糖(フルクトース)の代謝経路にかかわる,酵素が欠乏する先天代謝異常症である.下記2疾患と治療不要な本態性フルクトース尿症がある.
Ⅰ.遺伝性フルクトース不耐症(HFI:hereditary fructose intolerance)
●病態
・Aldolase-B(ALD-B)の欠損により,fructose-1-P(F-1-P)からfructose-1,6-bisphosphateへの変換ができず,毒性の高いF-1-Pが蓄積する常染色体劣性遺伝形式の疾患である.
・乳児期発症の乳児急性型と年長児にみられる慢性型があり,果糖を含む人工乳で栄養されている乳児は早期に発症する.
・乳児急性型では,人工乳や離乳食開始後に哺乳不良や嘔吐・肝腫大・黄疸・出血傾向・尿細管障害がみられ,果糖が除去されない場合,肝不全をきたし1か月以内に死亡することが多い.
●治療方針
肝生検による組織像と酵素活性測定で確定診断を行う.食事から果糖(果汁,ショ糖,蜂蜜を含む食品)を完全に除去する.果糖やソルビトール含有輸液は使用できない.
Ⅱ.フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ欠損症(FBPase欠損症:fructose-1,6-bisphosphatase deficiency)
●病態
・fructose-1,6-bisphosphateをfructose-1-Pへ変換するFBPaseの欠損による常染色体劣性遺伝形式の疾患である.
・FBPaseは糖新生系の律速酵素の1つであり,この欠損によりすべての糖新生機能が障害されるため,絶食により肝臓の貯蔵グリコーゲンが枯渇すると重篤な低血糖と代謝性アシドーシス,ケトーシス,高乳酸血症,高アラニン血症などをきたす.
・新生児期もしくは乳児期に発熱や飢餓を契機として発症することが多い.
●治療方針
肝生検による酵素活性測定で確定診断をするが,日本人ではFBP1遺伝子の高頻度変異
関連リンク
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